(ドラマ/ヒューマン)
『 野いちご 』
原題 : Smuktron-Stallet
製作 : 1957年
製作国 : スウェーデン
老医師の夢と現実を一種の回想形式で描く作品。
私(ヴィクトル・シェーストレム)は七十六歳の医師、他人との交渉を好まず、もっぱら書斎にひきこもっている。六月一日、私を襲った数々の出来事と夢と思索とは、自を裏切ってきた惨めな人生を思い知らせるものであった。その日、私は五十年にわたる医学への献身によって、名誉博士の称号をうける式典に出席することになっていた。息子エヴァルドの妻、マリアンヌ(イングリッド・チューリン)が同乗して車はルンドへ向う。思いついて青年時代を過した邸に立ち寄った。草むらの野いちごは、たちまちありし日の情景をよみがえらせた。--野いちごを摘む可憐なサーラ(ビビ・アンデショーン)は私のフィアンセだった。だが、大胆な私の弟がサーラを奪った。傷ついた私の心は未だに癒えない。ここから三人の無銭旅行者を乗せた。若い彼等の溢れんばかりの天衣無縫さに接して、私はいまさらのように無為に過ごした年月が悔まれた。曲り角で、すれ違う車とあやうく衝突しかけて、相手の車は転覆した。乗っていた二人を同乗させたが、彼らはみじめな夫婦だった。あたり構わず口論し、互にさげすみ、しまいには叩き合った。マリアンヌは二人を降ろした。廻り道をして、私は九十六歳の老母を訪ねた。彼女は他人にも自分にも厳しく、親族は誰も寄りつこうとしない。死さえも彼女をさけているようだ。車中、またしても私はまどろんだ。暗い森の中に連れて行かれた私は、妻カリンと愛人の密会を見た。それは私がかつて目撃した光景そのままであった。めざめた私は、妻の告白をきいて以来死を生きていることに気付いた。マリアンヌは、エヴァルトも死を望んでいるのだと話した。車はルンドに着き、ファンファーレと鐘の音に包まれて式典は荘重に行われた。エヴァルトの家にくつろいだ私は、いつになく暖い感情にひたっていた。ベッドに横たわるとまたしても夢の世界に入っていた。--野いちごの森からサーラが現れて私を入江に連れて行った。父は静かに釣糸をたれ、傍では母が本を開いていた。彼の心境をそのままにすべては安らかであった。
スタッフ : 監督 : イングマール・ベルイマン
脚本 : イングマール・ベルイマン
撮影 : グンナール・フィッシャー
音楽 : エリク・ノルドグレン
美術 : ギットン・グスタフソン
衣装 : ミリー・ストロム
キャスト : サーラ :
ビビ・アンデショーンマリアンヌ :
イングリッド・チューリンエヴァルド :
グンナール・ビョルンストランドイサク教授 :
ヴィクトル・シェストレムアンダース :
フォルケ・サンドクィストビクター :
ビヨルン・ビェルヴヴェンスタム彼女の恋人 :
オーケ・フリーデル叔母 :
シフ・ルードヘンリク・アケルマン :
マックス・フォン・シドーシャルロッタ :
グンネル・リンドブロム双子の姉妹 :
レナ・バーグマン双子の姉妹 :
モニカ・エーリン